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 核医学検査
監修:西台クリニック画像診断センター 宇野 公一
《 どんな検査 》 (イラストはクリックすると拡大します)
拡大図  核医学検査は、極微量のアイソトープ(ラジオアイソトープ;放射線を放出する元素)を目印としてつけた薬を用い、その薬の臓器に集まる時間と分布状態を観察し、病気の有無を調べる検査方法です。すなわち、ある特定の臓器や組織に非常に強い親和性を有する薬に目印としてアイソトープをつけて体内に投与すると、目的とする臓器や組織に集まります。そこで、微量の放射線を検出できる特殊カメラを用いて、薬から放出された放射線を体外で測定します。収集した放射線信号を光に変え、この光を電気的に増幅、画像化することが出来ます。このように測定結果を画像として表示する検査は、シンチグラフィと呼ばれます。
拡大図  核医学検査に用いられているカメラはガンマカメラSPECT(単光子放射断層撮影装置)、PET(陽電子放射断層撮影装置)等があります。画像検査には、経時的変化を連続画像として表示する動態画像と平衡状態にあるトレーサの分布を観察する静態画像があります。また、SPECTPETにて収集したデータをコンピュータで再構成し、任意の角度の断層像を作成できます。
 したがって、核医学画像検査は、目的臓器の形態のみならず、臓器機能や代謝状態を体外で観察できる優れた検査法です。
 投与された薬は臓器や組織の生理的状態によって分布しますので、病気があった場合、集まるはずのものが欠けたり、集まりすぎたり、また集まるはずの無い部位が集まったりなど異常な分布を示します。このように、核医学検査は、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、甲状腺、副甲状腺、副腎、骨などあらゆる臓器の機能を形態や動きとして画像化することにより体外で観察することができます。
《 何がわかる 》
拡大図  例えば、腎臓機能検査の場合、左右の腎臓ごとに測定を同時に行うことにより、分腎機能の評価ができます。骨シンチでは、一回の薬の投与で、全身骨の代謝状態が評価できます。画像上は、骨折や骨転移の部位に強い集積として捉えますので、他の検査より早くかつ正確に評価することが出来ます。
拡大図  また、FDG-PET腫瘍検査では、1回検査で原発腫瘍の検出のみならず、全身転移の検索もできます。このように、苦痛を与えなく身体各臓器の代謝状態を観察でき、他の検査より早期かつ正確に病変を検出できることが核医学検査の大きな特徴です。現在、核医学検査は、優れた機能画像検査法として診断や治療効果の判定など様々の分野に用いられ、臨床診療に必要不可欠な存在となっています。
《 どうやって検査 》
拡大図  核医学画像検査は、検査の目的に応じて薬を選択します。多くの場合静脈注射や、カプセルを飲んでもらうことにより体内に投与します。検査は、装置の専用ベッドに寝て、ガンマカメラやSPECT、PET等の特殊なカメラを用いて撮像を行います。
薬の投与と同時に撮像を始める検査もありますが、目的臓器に薬が集まるまで2-3時間待ったりしてから検査が始まる場合もあります。また、撮像時間は短いものがあれば、長く(2時間前後)かかるものもあります。長時間でベッド上に寝ているのは苦痛ですが、動かないことが真の画像を得るために重要です。一般的には、来院当日で検査終了する場合が多いのですが、中には1日または2-3日後にもう一度来てもらうこともあります。
拡大図  核医学画像検査用の薬の副作用は非常にまれで、10万人に約1.3の割合と報告されてます。臨床上、検査精度を向上するために、負荷テストを加える場合があり、検査用以外の薬を投与することがあります。心臓がドキドキすることもありますが、医師が常に身体の状態をチェックしながら検査しますので心配は要りません。
《 検査前に伝えてほしいこと 》
拡大図
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 多くの核医学検査では前処置が不要です。しかし検査の性質上、目的臓器に薬が集まるまで2-3時間待ったり、朝食を絶食したり、服用中のお薬を検査終了まで一時中止する場合もあります。例えば肝臓、肝・胆道機能検査の場合は空腹状態で検査を行うので、朝食絶食が必要です。甲状腺の検査では、数日前から検査終了まで1-2週間で海藻などヨウ素を含む飲食を禁止されることがあります。また、ガリウム検査は、注射してから2日後に撮像する場合が一般的です。薬の腸管への排泄が診断に影響を与えることがあり、検査前夜に下剤を服用したりして排便させることがあります。
拡大図  放射性医薬品は普通の医薬品と異なり、ガンマ線を放出し減衰していくラジオアイソトープを含んでいるため、時間の経過とともに効力を失います。したがって、検査は予約制になっています。事情によって検査をキャンセルすることが出来ますが、検査当日のキャンセルは、薬品費用の支払いを請求される場合があります。
《 放射線被曝について 》
拡大図  核医学画像検査を用いたアイソトープは、半減期の短いものを選んでいます。さらに生理的な半減期(体外への排泄)を加え、短時日で放射能がほとんど消失して行きます。また、核医学検査は患者さんの年齢や体格などによって、使う放射性医薬品の量を厳密に調整し、検査に必要とするだけの微量に定めているので、被曝線量は最小限に抑えます。核医学検査は非侵襲的で病気の検出に重要な役割を果たしており、検査によって患者さんの得る利益のほうが放射線被曝の危険よりもはるかに大きいと言えます。
拡大図 ただし、妊娠していると思われる女性の核医学検査はできるだけ避けるのがよいので、検査予約の時に必ずお話しください(これはどの放射線検査も同じです)。

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